DEPTH(その1)

プレイステーション/1996年12月6日発売/SCE(開発オーパス) スウィープステーション第一弾 ミュージックアドベンチャーゲーム

自分(当時24歳)がオーパスにアルバイトとして採用され開発に携わった三本目のタイトル。前2タイトルはお手伝いという感じだったのですが、このタイトルからグラフィックとして本格的に参加できました。世界設定からムービーのディレクション、コンテ、作成、リアルタイムポリゴンのモデリングやテクスチャー、ドット画までほぼ全てのグラフィック作業を行えたので非常にやりごたえがありました。音楽を作るグルーヴエディターのUI設計も行っております。

音楽を作ったり演奏できるソフトなのですが、主人公がイルカだったり、12の幻想的なムービーステージがあったりとプレイステーションならではなタイトルと思います。

当時の開発場所は自由が丘の一軒家。とても大きくキレイな家で居心地は良かったのですが、グラフィックの部屋が寝室で照明が暗く食後に眠くなるのが大変でした。その寝室にグラフィックが4名(それでグラフィックは全員)で『DEPTH』に参加したのは2名だったと記憶しています。それ以外に社外に1名、SCEさんのムービーチーム(『フィロソマ』のムービーを作られていたチーム)にもヘルプして頂きました。自分以外の方は全てムービー作成の方だったので、それ以外のグラフィック作業は全て一人で行ったということになります。

ムービーといえば『DEPTH』はムービーを再生しながらその上でリアルタイムのポリゴンを描画し遊べる様にしていました。この手法は『ファイナルファンタジー7(1997)』で使われ話題になりました。1996年の段階でこの手法を使っていた国内タイトルは無かったと思います(海外では『タイムコマンドー(1996)』が背景で動画を使用していた)。主人公のイルカがマルチテクスチャーでコースティクス表現を行っていたり色々頑張ってました。この辺の技術は凄腕プログラマーの中村さん(※1)のおかげです。

『DEPTH』のムービーは全部で12。4ステージをSCEさん、2ステージを外部の方(MacのStrata3Dで作成)、残り6ステージを内部(WindowsのLigtWave3Dで作成)という構成。ただ『DEPTH』には隠しムービーステージが存在します。その隠しムービーは『DEPTH』をプロデュースされたZENさん(渡辺善太郎氏※2)によるものです。善太郎さんは先日(2021年7月22日)残念ながらお亡くなりになりました。『DEPTH』の音源はほぼ善太郎さんによるものです。イルカを主人公にしたビジュアルコンセプトも善太郎さんによるもので、イルカの3Dモデルも善太郎さんがLightWave3Dでモデリングされたものをそのまま使用しています。開発中何度もお会いし直接ご意見を頂けました。とても気さくでお優しい方でした。ご冥福をお祈り申し上げます。このタイトルに参加出来たことをとても光栄に思っております。
(ムービー作成の話やDEPTH隊についてはその2以降で…)

※1:中村貴也さん。『DEPTH』のメインプログラマー。『グルーヴ地獄V』のミニゲームなども作られたスーパープログラマー
※2:日本のミュージシャン/音楽プロデューサー。「詩人の血」「Oh! penelope」などで活動されました。

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